これまでの



第2回■おさかな事件



 いつだったか、といってもそんなに前のことではないけれど、朝、息子の歯を磨いていたときのこと。ゴシゴシゴシゴシ、ようやく磨けた、と思ってキッチンに連れていった。そこで、抱っこというか、後ろから息子の両脇を抱きかかえ(こうしないと、息子の顔が流し台の上に出ないのだ)、グチュグチュパーッと、コップの水で口をゆすがせようと思ったら、口をゆすぐ前に息子が口の中にたまったものをペーッと吐きだした。
 その瞬間、息子が叫んだ。「おさかな! おさかな!」
 えっ、何を言うとんねん。何が「さかな」やねん。僕は突っ込んだ。すると息子は、流し台の底を指差し、もう一度「おさかな!」と言って笑った。
 あ、今度は僕にもわかった。ほんまに、さかなや。
 息子がペーッと口から出した白い液体(なんと言えばいいのかな、歯磨き粉をつけて歯磨きしてから、ペーッと口から出された状態のもの)が、見事にというか、たしかに「さかなっぽい」かたちになっていた。お見事! っていうことはないけど、かなり、さかなっぽかった。よく見つけたな。感心し、そして僕も笑った。

 子どもといると、こういうことがちょくちょくあって、うれしくなる。ものの見方がちがうのか、大人と視点がちがうのか。ただたんに僕が忙しいから、というか大人は朝、バタバタしていることが多いから、いろんなことに気づくこと(発見すること)が減ってしまっているのか。
 歯磨き粉がおさかなに見える、といった事件(事件というほどではないか)に出くわすと、子どもがうらやましくなる。そして、自分がユニークなものの見方を忘れかけていることが分かって、ちょっとさびしくなる。

 昨日はこんなことがあった。朝食のとき、息子が言った。「お父ちゃん、納豆にごはん、かけて!」
 ごはんに納豆、かけるんちゃうんかい。そう言いかけて、思い直した。納豆にごはん、のほうがおもろいがな。


第1回■マイ漢字で日記



 この『はなと陽よと育てたい』がずいぶん遅れているため、フリースタイルの吉田さんから、相談を受けた。
 吉田さんが言ったセリフのままではないけれど、内容はほぼ次ようなもの。選択肢は3つ。1つめは、遅れているぶんを取り戻して、日記形式を続ける。2つめは、遅れているぶんには目をつぶって、チャラにして、最近の日付にいきなりワープしてまた日記を書き綴る。3つめは、今までとは別の何かに変更する。
 う〜ん、どうしようかな、正直こまった。1年以上遅れてしまった日記を追いつくのはなかなか難しそうだし(そこまで遅れる僕がわるいんだけど)、過去の1年ぶんをチャラにして、最近の日付から日記を書くのは、それならできるかも。でも、ちょっと待てよ。せっかくだから、日記形式以外の文章にトライしてみるのもいいかもしれない。

 それからもうひとつ、ちょっと気になっていたことがあって。僕が育児日記を書き続けることをどう思うか、小1の娘に聞いてみた。
「お父ちゃんが、育児日記というか、はなや陽のことを書いたらイヤか」
 すると娘は「お友だちも見る?」とたずねる。
「どうかな。漢字も多いし、まだ読む子はおらんと思うで。たまたま見たとしても、内容を親に教えてもらわな、わからんやろな」
「じゃあ、お父ちゃんが作った漢字で書けばいいんじゃないの?」
 え、なに言い出すねん、じぶん。お父ちゃんが漢字、作るんかい。それは思いつかんかったわ(って、でけんちゅうねん)。まあでも、たまにこういうこと言い出すから、やっぱり子どもはおもろいわ。
 そや。子どもと過ごすなかで、僕が衝撃を受けたことを、日記のかたちにこだわらず、素直に書いてみようかな。


 

ホームへ